伊藤計劃氏の遺稿30ページを、交流があった円城塔氏が引き継いで完成させた作品。
プロローグ以外の文章は円城氏によるものだそうで、伊藤氏の文体を真似たパスティーシュ小説。
この作品を読むにあたって、伊藤氏の2作品、円城氏の「バナナ剥きには最適な日々」を読んだが、この作品は確かに伊藤氏の作品のように感じられもする。
しかしながら、やはり終盤になるにつれ円城氏っぽい難解な内容によって読む速度が落ちる。
他人の土俵ということもあるのかもしれないが、そういった難しい内容もさらっと読ませた伊藤氏の文章の凄さを改めて感じた。

この作品は、シャーロックホームズやフランケンシュタインなどの創作物の登場人物、日本の実在した人物などが登場。
死者を操る技術が確立した19世紀、それが欠かせない労働力として社会に浸透している世界を描く。

操ることができる生物は人間だけ。それがなぜか、という謎を通じて、人間の精神、魂とは何なのか、について考えさえる内容。
伊藤氏の他の2作品と共通するテーマ。

最近のNHKスペシャル「人体」で、人間の行動を決めているのは脳ではなく人間を形作る多くの細胞である、という理論を展開しているが、それにも通じるものがある。

自分も人間の意志は絶対的な存在ではないと思っているので、本書の内容は腑に落ちた。
たまたま、自分の肉体を制御しているつもりの主人格として、引き続き、肉体を通じてのこの世界の変化を楽しんでいければ、と思う。

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