「戦艦武蔵」で有名な、吉村昭氏によるノンフィクション小説。
史料、インタビューを重ねた徹底的な取材に裏打ちされた、骨太な作品。

航空技術後進国であった20世紀前半の日本で、性能も世界トップレベルな純国産機として突然登場したのが、96式艦上戦闘機。
設計は、三菱の堀越二郎。複葉機が当たり前だった当時の航空機の常識を破る画期的な設計で抜群の空戦性能を誇ったという。

それをさらに発展させて海軍の無茶ぶり要求を満足したのが、本書の主役である零式艦上戦闘機。
試作機から中国戦線で活躍し、太平洋戦争でも圧倒的な強さを見せた。

前半は、航空後進国の日本で奇跡的な名機が誕生するまでと、序盤の華々しい戦いぶりについて、
後半は、工業力に勝る米国による巻き返しと、日本が無条件降伏受諾に追いつめられるまでについて。
50年前の作品ながら、情景が浮かぶリアルな筆致で、前半部には理系日本人としての血が沸き立つ興奮を覚え、後半は、今でも改善されているとは言いがたい日本のダメな部分と、それに翻弄される人々についての描写に心が痛んだ。

著者については良く知らなかったけど、他の作品も読んでみたい。

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