著者は、名古屋大名誉教授の、中国思想史家。

十八史略というのは、南宋末から元にかけて生きた元官僚が、子供向けの塾の教材として作った文書。
中国有史以来、南宋までの王朝の史書を切り貼りしたものだそうだ。

本書では、殷以前の三皇五帝の時代、殷末~周、春秋戦国時代、前漢、後漢、三国時代、そこから時代は飛んで唐、最後に南宋末について取り上げている。
マイナーな時代についても読みたかったのだが、解説するようなネタがなかったのだろうか。。

本書の構成は、まず読み下し文、続いて原文、その次に現代語訳、語句解説、最後に解説、という形をとっている。
読み下し文と原文は難解なのでスルーしたが、内容的には面白いし、これが漢文の教材だったら、学生時代はもっと漢文に興味を持ったかもしれない。
で、現代語訳で内容を理解したあと、語句解説で豆知識を得て、研究者ならではな深そうな解説にうなる、と一つの章で3度楽しめた。

元代に書かれた十八史略、当時や、参考にした史書がかかれた世相から、事実からの脚色が色々あったようで、その点について冷静にツッコミを加えており、勉強になった。
文章に書かれていることと、対象である事象は、必ずしも一致しない、というメディアリテラシーとして大事な原則を実感できる。
歴史が科学でなく文学に分類される所以だろう。

印象に残ったのは、前後漢の時代において、前漢では外戚が跋扈し、後漢ではそれを取り除くために利用した宦官が跋扈したというところ。権力の座に長く居ると、どうしても腐ってしまうものらしい。
定期的な交換が必要なのだな、と改めて思った。

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