Will to Death

2004年7月8日 音楽
John Frusciante CD Record Collection 2004/06/22 ¥2,138

レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリスト、ジョン・フルシャンテのソロアルバムの最新版。
ジョン・フルシャンテは、レッチリの中心メンバーであるフリー、アンソニーの高校の同級生であるギタリスト、ハイレル・スロバーグがヘロインのオーバードーズで死んでしまった後釜として20歳を迎えるまえにレッチリに加入した。
ものの本によれば、自宅に引きこもってジミ・ヘンドリックスのレコードを見よう見まねでコピーすることによってギターを独習した彼は、もともとレッチリのファンだったそうである。
前任者のハイレルはサイケなプレーに定評があったのだが、そういう出自をもったジョンもアバンギャルドでサイケなプレーをさせたら誰にもひけをとらず、幼馴染の後釜という難しい役をなんなくこなしてみせて、彼はもともとバンドに昔からいたかのような存在感を示す。
おりしも、彼が加入後のアルバム「Mother’s Milk」でレッチリは世界的にブレイクし、彼は10代にしてロックスターの仲間入りを遂げてしまったわけだ。
続く「Blood Sugar Sex Magik」はロック史に残る名盤と名高く、セールス的にも前作を超えるヒットを記録して彼らは順風満帆に見えたのだが、若くして成功を手に入れてしまったジョンが感じていたプレッシャーは相当なものだったようだ。
彼は「Blood〜」に伴う世界ツアーの一環としての日本公演の途中、最終日を待たずして突然ドロップアウトしてしまったのであった。
その後のレッチリはアンソニーの麻薬禍が再発したり、フリーがもやもや病(?)にかかったと報じられたりなどそれはもう踏んだり蹴ったりの状態で、ジェーンズ・アディクションの名手デイヴ・ナヴァロを迎えて製作した「One Hot Minute」も、個人的には好きだが市場の評価はイマイチ、とバンドはいわゆるもがいている状態だった。
一方バンドを離脱したジョンは、またしても引きこもって、今度はヘロイン漬けだったようである。
(その名残として、ジョンの前歯は全部溶けてしまっており、またおそらく中毒症状でかきむしりでもしたのか、右腕にケロイド状の傷が残っている。)
そんな中、彼が「ヘロインを買う金ほしさに作った」と語る「Niandra Lades And Usually Just A T-Shirt」と「Smile From The Streets You Hold」の2枚のソロアルバムが突然リリースされた。
その中身はというと、報じられているジョンのヘロイン禍が本当なんだなあと証明するに足るなんだか凄い内容で、
不協和音気味の音をたててかき鳴らされるギターをバックにジョンが金切り声を上げて叫ぶというようなもので、安っぽい録音状態も相まって、枯れた中にもなんだか狂気に満ちた雰囲気を創り上げていた。
絵画でいうと、オスカー・ココシュカとかそのへんの気が触れてる系の画家が鉛筆だけで素描したような感じというか。
そういうわけでお子様にはとてもオススメできないサウンドなんだけど、俺はその凄みがなんだか気に入って結構愛聴していたものである。

ちなみに、後にわかることだけど、「Smile〜」の方は”Height Down”という曲で俳優リバー・フェニックスと共演していることで有名。その他の曲は、「Blood〜」のツアー中に書き溜めたものが中心らしい。
そのリバーもおそらく薬物中毒と思われる死に方をしているわけで、リバーの死もジョンになんらかの影響を与えたことは想像に難くない。

そんなわけで、ジョンのソロアルバムを聴きながら、こいつもうダメだろうな、、、と思っていたある日。
ジョンはレッチリに電撃復帰する。それを受けてのアルバム「Californication」は、ジョンがソロアルバムで示していた枯れた雰囲気が前面に押し出されており、やはりこのバンドはギタリストが核だなーと思いつつも、結果的にジョンがレッチリを離れていたことはレッチリの成長のためには必要だったのではないかとすら思える大人への成長を感じさせる作品だった。
そういうわけでジョンはレッチリに復帰し、レッチリも大物アーティストとして君臨しているわけだけど、レッチリ復帰以降のジョンのソロ作品はこれを含めて3枚出ている。
ジョンの枯れたサウンドは彼の心の内面と共に(?)円熟を迎えつつあるようで、初期の狂気はなくなってしまったものの、打ち込みでリズムセッションが入ったり、リズムセッションを迎えたりなど音楽として完成された方向に向かいつつも、どことなく物悲しくさびしげな枯れたサウンドが夏の暑さや仕事の疲れに効くのである。

そんなわけで、だいぶ前置きが長くなってしまったのだけど、ジョンの心の内面を箱庭にしたような彼のソロアルバムは、できれば是非初期の作品と聴き比べながら味わっていただきたい。

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