ISBN:4103096217 単行本 塩野 七生 新潮社 ¥2,800

塩野七生のライフワーク、全15冊からなるローマ帝国伝の12冊目。この巻で取り上げるのは、3世紀、軍人皇帝時代に中興したセプティミウス・セヴェルスの跡継ぎであるカラカラ帝から、キリスト教迫害で有名なディオクレティアヌス帝までの時代、いわゆる皇帝が乱立した軍人皇帝時代の話である。
さすがライフワークだけあって、混乱の時代になんとなく半年ほど皇帝になってしまった学校の歴史の授業では省略されるような人に関する描写もしっかりしていて読み応えがあるし、この時代も混乱していてたいした人物は出なかった、という、世界史の授業の進行の都合で思い込まされていた時代にも実は優秀な皇帝は居た(にもかかわらず、この時代になると皇帝はちょっとしたことでいとも簡単に殺されてしまうのだが)という点が興味深かった。
とはいってもやはり混乱の時代、焦点は栄華を誇ったローマ帝国がいかにして瓦解していくかを鋭い視点で分析しつつ描写しており、反面教師として学ぶところも多い。

一般に不寛容なキリスト教の黎明期を異端として扱ったばかりに、中世のキリスト教全盛期に作られたと思われる暴君が統治する暗黒の時代というイメージで語られがちなローマ帝国だが、このライフワークを通じて、地中海世界を長期に渡って支配した大帝国のシステムやその時代の人物の人となりをローマ研究者の視点から学ぶことができる。
まあ、逆に言うと著者のローマへの愛が強すぎるのか、わりとローマびいきな視点で書かれているように感じるところが問題かも知れないけれど。。。

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